陶弘護の解説~陰謀に散った大内氏の若き猛将

陶弘護

陶弘護とは

陶弘護(すえ-ひろもり)は周防大内氏の重臣陶弘房の嫡男として生まれます。生年は康正元年(1455年)と言われ、別名は五郎。父弘房が応仁の乱にて戦死したため陶氏の家督を相続します。

陶氏は周防大内氏の一族で、右田盛長の子孫右田弘賢が周防の吉敷郡陶村に領地があったことにより陶氏を称したと言われています。そして陶氏は主家である大内氏の周防守護代を務める家柄でした。

応仁元年(1467年)京都で応仁の乱が起こります。この大乱に大内政弘は西軍の山名宗全に味方するため大軍を率いて上京、東軍の細川勝元と対立します。

このとき大内氏の領内では大内政弘の留守を好機とした反大内方の活動が活発化、北九州では少弐氏や大友氏が筑前・豊前に侵攻を開始、そして文明2年(1470年)5月には政弘の叔父大内教幸が長門赤間関にて挙兵します。

これらの反大内の活動には大内政弘と対立する細川勝元の謀略があったと言われ、政弘を裏切って東軍についた大内教幸には大内氏一門の大内武治や大内氏重臣たちが賛同し、家督を相続したばかりの陶弘護も教幸と行動をともします。

しかし、この陶弘護の行動は当時より大内教幸討伐への謀略と考えられており、大内氏家臣杉重孝は書状において弘護の行動は武略の一環と記しています。

その後、陶弘護は留守中の大内氏家臣団をまとめて同年12月に教幸へ挙兵。京都より帰国してきた大内氏家臣益田貞兼とともに反乱を鎮圧し、文明3年(1471年)1月には教幸を豊前にて自害させます。また弘護は北九州にも出陣し少弐氏を太宰府より追放します。

そして同年12月陶弘護ら留守居衆は畿内にいる大内政弘側近に戦勝の報告をします。この中で弘護らは主君である政弘にご帰国するなら今で、遅れるならその後の戦況は分からないと述べています。その後応仁の乱は終息し、文明9年(1477年)11月京都より政弘が帰国します。

帰国後の大内政弘は積極的に北九州に出陣して勢力を拡大します。しかし『正任記』の文明10年(1478年)10月4日条には、この合戦中に陶弘護と政弘が筑前博多にて対立したと記しています。

その内容は陶弘護が実施した臨時措置の延長についてで、弘護は応仁の乱中に筑前・豊前出身の兵士に対し周防・長門の寺社領の年貢半分をあてがっていました。この件について当初、大内政弘は大乱中はこれを認めていましたが、乱終息後は措置の延長を却下。この決断は権限を強める弘護への牽制があったと考えられています。

陶弘護暗殺

文明14年(1482年)5月、陶弘護は大内政弘の館で岩見国人の吉見信頼に殺害されます。享年28才。実行犯の信頼はその場で大内氏家臣内藤弘矩に殺害され、この事件は吉見氏と所領問題を抱える石見国人の益田氏を弘護が姻戚関係に基づいて擁護していたのが原因だったと考えられています。

また大内教幸の乱において陶弘護が吉見氏を自身の謀略に利用した節があり、弘護は信頼の父吉見成頼に宛てた書状に、教幸ではなく息子の大内喜々丸への家督相続を幕府へ取りなすよう細川勝元へ頼むよう伝えており、結果的にこの行動は教幸を欺むためにしていたもので、教幸方だった吉見氏はそれ以降、弘護に不信感を抱いていたと考えられます。そしてこの事件は主君大内政弘の関与も疑われています。

大内政弘は、陶弘護殺害の事件後同年6月安芸国人吉川氏や益田氏らとともに吉見領に侵攻します。しかし、同年12月頃には益田氏や陶氏が戦場にて交戦中にもかかわらず政弘は撤退を開始しており、このような政弘の不可解な行動は他にも見られ、弘護を殺害した際に使用した吉見信頼の刀「鵜噬(うくい)」を、その後に政弘は下賜という形で信頼の父吉見成頼に贈ったといわれており、大内氏家中ではその後に吉見姓の家臣が急増しています。

そして陶弘護亡き後、陶氏の家督と周防守護代の職は弘護の嫡男陶武護が相続しますが、武護は大内政弘の嫡男大内義興の上洛中に京都にて出奔、陶氏の家督は武護の弟陶興明が相続しその職務を果たすことになります。しかし、明応4年(1495年)2月、出奔したはずの武護が突如帰国し興明を討ち果たします。

そして、同月には大内政弘が吉見信頼を討った内藤弘矩を自邸にて殺害する事件が起こります。これも、陶弘護殺害に自身が関与していることの漏洩を恐れた政弘が、真実を知っている弘矩と陶武護との連携を恐れて殺害したとも言われており、その後武護は紀伊高野山に逃亡、同年6月頃には討ち死にしたと言われています。

こうして陶弘護の死後、陶氏の家督は紆余曲折の末に陶興房が継ぐことになります。

(寄稿)kawai

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