八百屋お七~世の哀れ 恋人に会いたい一心で放火し処刑に

八百屋お七

八百屋お七(やおや-おしち)は江戸時代前期、江戸・本郷駒込に住んでいたとされる町娘である。
八百屋の娘で、八百屋お七と呼ばれる。
謎の多い人物で、生まれた年や亡くなった日は不明だが、一方で「駒込のお七が火を付けた」という記録と、品川・鈴ヶ森刑場で火炙り刑になったということがわかっているだけである。
お七事件は、江戸においての文学作品や芸能に影響を与えた。

天和の大火

天和2年(1682年)12月28日、駒込・大円寺から出火し3500人もの人が亡くなる火災が発生した。
天和の大火と呼ばれる。
この火事で、お七の家族が駒込・吉祥寺に逃げてきた。
家が建て直されるまでの避難である。
この時、お七は吉祥寺の寺小姓・吉三郎に出会い恋に落ちる。(寺名、少年の名前には諸説ある)


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お七と吉三郎

前述のように、お七における歴史的な資料はほとんどなく、物語は井原西鶴の好色五人女が基本になっているといってよい。
なので、実のお七というものは知るよしもないのだが、好色五人女から見るお七は、主人公の輪郭をはっきりさせるため、よくいえば生き生き描かれている印象がある。
西鶴の描くお七は「世の人はなぜ雷を恐れるのか」というセリフがあり作者も、お七のキャラクターをはっきりしておいた方が物語を構成させやすかったのではないか、とも思う。
一方の吉三郎(吉三)は、お七の同い年の寺小姓。
寺小姓の説明は省かせていただくが、こちらも美少年とある。
寺小姓と美少年はセットのようなもので、物語はこれで流れていき、吉三の指に刺さったトゲをお七が抜いてあげるところで悲恋が始まった。

放火

お七と吉三は、その後手紙のやり取りなど繰り返したが、お七は家の再建に伴って寺を後にする。
戻ったお七は、しばらく情緒不安定だった。
吉三とやり取りした手紙だけが残っているだけである。
「吉三様に逢いたい・・・」こうなったら、吉三の事しか頭にない。
「そう、もう一度火事になれば」当時の放火は大罪であるので正気の沙汰ではないのだが、思い立ったら早かった。
お七は、立て直したばかりの自分の住んでいる家に火を付けた。

桜が散るように

火を付けたお七は、強風のなかで大きくなっていく火を見て正気に戻ったらしい。
みずから火見櫓に上り、半鐘を叩いたが何の意味もない。
火は消されたが、お七はすぐに南町奉行に連れていかれた。
取り調べで、お七は放火の事実を正直に認めている。
奉行の甲斐庄正親は、この少女を不憫に思い、命だけは助けてあげたいと「そなたはまだ十五であろう」(十五と十六は島流しか死罪の境らしい)と聞いたのに対し、自分はもう十六であると、かたくなに主張したという。
おそらく、後に付け加えた創作であろうが、お七の気丈な性格が出たエピソードだ。
甲斐庄は仕方なく、火付けの罪で火炙り刑を宣告した。
江戸市中引き廻され、鈴ヶ森刑場にて十六歳の若い命は散っていった。
「世の哀れ 春吹く風に 名を残し 遅れ桜の 今日散りし身は」
遅咲きの桜を役人から手渡され、お七が最後に遺した言葉である。

その後の物語

その時の吉三はというと、体調を崩していたらしい。
周囲が心配し、事件のことを何も伝えていなかったのだが、寺がその事を告げたのは百ヶ日の朝だった。
吉三は後を追おうとするが、お七の遺言が「私を弔ってほしい」であったと聞き思いとどまる。
吉三は出家し、西運となり目黒・明王院に入る。
供養のため目黒不動と浅草観音を嵐の日も念仏を唱えて歩いたそうである。
有名な目黒雅叙園は、その明王院跡になるらしい。
目黒雅叙園内には、西運が使っていたと伝わる「お七の井戸」がある。
興味のある方は是非ご覧になっていただきたい。
ちなみに雅叙園から上っていく坂(行人坂)の途中に目黒・大円寺という寺がある。
明王院とは違う寺で、明王院が明治に廃寺になって西運ゆかりのものが大円寺に移された。
昭和になって日参りする西運の姿を刻んだ石碑が立てられた。
その横には、地蔵菩薩が立っているが、優しそうなお顔がお七のような気がして微笑ましい。


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これも余談だが、明和9年(1772年)に江戸三大大火に数えられる、大円寺火元の行人坂の大火が発生している。
火事という事件と、お寺の名前が一致しているのは偶然だが面白い気がする。

(寄稿)浅原

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