北条氏からも知行?していた小山田氏のなぞに迫る

 相模国小山田庄(町田市)や成瀬(町田市)など16村に419貫812文を知行した人物として、小田原北条氏の小田原衆所領役帳(1559年)に「他国衆」として小山田弥三郎の名が見られる。

 北条氏家臣に名がある小山田弥三郎は小山田弥三郎有信と同一人物であったとする説がある。

 その理由としては、三国同盟の際、1554年12月武田信玄の娘が北条氏に輿入れする際の記録が残っている「勝山記」にある。

 「米岐女(ひきめ)の役は小山田弥三郎殿が担当。全部金銀の鞍に飾りをつけた馬に乗り、新調の衣服したたれに黄金造りの太刀を帯び、行列は一日中郡内を通った。甲州より3000騎、人数は10000人、上野原牛倉神社にて相州より迎えに来た北条勢10000に遠山殿に引き渡し、それを取り仕切る小山田弥三郎は小山田勢を率いて小田原まで新婦を送った」と言う旨が、勝山記に記載されている。


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 米岐女(ひきめ)役とは、慶事に鏑矢を射て魔を払う音声を発する矢のことで、由緒正しい名家の大将が選ばれるのが慣例となっている。武田晴信(武田信玄)から郡内・小山田氏への信頼が厚かった証拠でもある。

 特筆するのは勝山記は、北条勢力が書いた書物ではなく、小山田氏の領内である甲斐都留郡勝山村の冨士御室浅間神社が所有する門外不出の歴史書だと言うこと。
 小山田氏側が記述した書物に小山田弥三郎と言う名が見られるのである。

 小田原北条氏としてみれば、小山田氏を北条家臣として知行させることにより、小山田氏を北条側に取り込みたい、また取り込めなくても、小山田氏を武田が裏切り?と疑うように仕向けたいと言う意図があったと考られるが、実際にその兵糧・金銭が北条氏から小山田氏に流れたのかどうかを確かめるすべは無い。

 ちなみに、1582年の武田滅亡時に徳川家康に降った穴山梅雪も、徳川氏からでなく、北条氏からも所領を与えられている。

 また、小田原衆所領役帳(1559年)には小山田弥五郎が伊豆川津郷ほかに381貫100文を知行ともある。武田信玄の近習衆(御小姓衆)に小山田弥五郎の名も見られるが、この小山田氏は、武田滅亡後、徳川家康に使えた、石田・小山田氏系であるとも当初は考えていました。

 しかし・・・。

その後の私的研究結果

 その後、自分なりに長年かけて、本当に小山田信茂の郡内・小山田家が、小田原城主・北条家から知行を受けていたのか、研究してきました。
 その結果、現在では「ノー」だと考えています。

 そもそも、武田家に従属しているのに、北条家からも知行していては、小山田信茂は北条家への内通を疑われてもおかしくありませんので、そんな危険な道を辿るとは考えにくいです。
 北条家としても、内応してもらう為に、金品を贈ったりすることはあったとしても、いくら味方につけたいからと言って、領地を与えるとは思えません。
 領地をもらったとしても、郡内・小山田家が敵地に代官を派遣したりするのは困難が伴うと思いますし、現実的ではありません。

 そして、町田市の小山田氏関連の史跡を、徹底的にみているうちに、滅んだと思われた小山田城主・小山田家の本家が、その後の南北朝時代の頃にも、細々と存続していたことがわかりました。

 (例)矢部八幡神社(箭幹八幡宮)と小山田高家のなぞ
   小山田義重(小山田次郎義重)を検証してみた

 そのため、1559年の小田原衆所領役帳にみられる、成瀬他419貫812文の16村の小山田弥三郎は、町田の小山田家の本流と小生は推測致しております。
 弥三郎と言う通称は、小山田家にしてみれは「正当な当主」であると主張しているものですので、町田の小山田家も細々とですが戦国時代にも存続しており、必然的に北条家の家臣になっていたのだと推測致しました。

 なお、北条家は小山田弥三郎の事を「他国衆」としていますが、他国衆の武将は28名います。
 これは北条家に従属した勢力と言う意味ですので、小山田弥三郎もある意味、成瀬や町田辺りの独立勢力(小領主)で北条家に従属したため「他国衆」と表記したものと推測致します。

 また、伊豆の小山田弥五郎に関しては、油川信恵を支持した勝山城主・小山田平三が、1508年に武田信虎に攻められて、伊豆・韮山城に逃亡しています。
 この頃、伊豆は北条早雲の領地で、相模に進出していた頃ですので、恐らく小山田平三は北条家の家臣になったのではないでしょうか?
 そう考えますと、伊豆の小山田弥五郎は、小山田平三の子孫とも考えられます。

小山田信茂(小山田藤乙丸)~(1545年?~1582年)郡内の実力者
小山田記~ 現認・小山田氏400年の存亡【小山田氏関連の考察とまとめ】

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