細川昭元の解説 逃亡と人質生活 戦国を生き抜いた名門当主

細川昭元

細川昭元(ほそかわ-あきもと)は、細川吉兆家当主で室町幕府第34代管領の細川晴元と近江国国主・六角定頼の娘との間に天文17年(1548年)に生まれました。
幼名を聡明丸といいます。
昭元が生まれた頃の京都は、父・晴元と父の仇敵細川高国派の残党が覇権を争っており、聡明丸が2歳の頃には三好長慶・三好政長をの勢力に京都を追われ、近江国に逃れていました。
聡明丸4歳の時に、細川晴元は三好長慶と和睦し、聡明丸は人質として三好長慶に預けられています。

人質生活の中での元服

父・細川晴元と三好長慶は、その後も敵対と和睦を繰り返しましたが、昭元は三好長慶の手元に留め置かれたまま、永禄元年(1558年)、11歳で元服、名を六郎と改めます。


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細川晴元が永禄6年(1563年)、没すると、細川昭元は父の跡を継ぎ、当時細川氏本流とも言える京兆家当主となりましたが、父の政敵で三好長慶勢の傀儡であったとも言われる細川氏綱が没した後に管領に就くことはなく、京兆家の名の由来である右京大夫に任じられることもありませんでした。
それでも昭元は三好長慶の保護を受け続けており、三好長慶が没した後も三好三人衆と行動を共にしています。

信長上洛

永禄8年(1565年)、時の将軍・足利義輝が三好三人衆に暗殺された後、彼らが擁立した14代将軍・足利義栄の下で、管領と同等の待遇を受けていましたが、永禄11年(1568年)、織田信長足利義昭を奉じて上京してくると、三好三人衆のうち三好長逸と共に、摂津・芥川山城で籠城したり、元亀元(1570)年には野田城・福島城の戦いでも奮戦しました。
しかし、三好三人衆が信長と和議を結ぶと、昭元もそれに応じて、足利義昭と臣下の礼を取り、足利義昭から偏諱を受けて、細川昭元と名乗りました。
その後、義昭・信長に付き従って相対した三好氏の残党や本願寺勢力との戦では、大した武功を挙げることはなかったものの、信長の力添えもあり、右京大夫にも任じられました。

この頃の織田信長は、室町幕府を維持し、旧来の勢力を抑え込む政策を取っていたため、管領職を担い続けた名門・細川京兆家の家名は、自身の政策に有効な道具であったと考えられます。

信長と義兄弟

織田信長は、足利義昭を京から追放した後は細川昭元を山城守護に据え、さらに妹のお犬の方を嫁がせています。
お犬の方は、先の夫を亡くしており、出戻りで昭元より年長ではありましたが、この婚姻により、織田家の親戚となったことは、昭元本人だけでなくその子孫にも大きな影響を与えることになります。


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戦上手とは言えぬ昭元でしたが、その京兆家という血筋を重視した信長との関係が強化され、名も信元、信良と信長から偏諱をもらい、丹波国2郡を拝領したとの記録があります。

本能寺の変後、晩年とその子孫

本能寺の変で織田信長が倒れると、その後に台頭した羽柴秀吉の四国征伐に対して、元々の家臣筋である長宗我部元親と共闘しようと画策した形跡がありますが、後に秀吉に従属し、天下人となった秀吉の御伽衆としてなっています。

ただ、その晩年には諸説あり、天正20年(1592年)に没したとも元和元年(1615年)に没したとも記録されています。

細川昭元の血筋は、娘が嫁いだ常陸国宍戸藩の秋田氏に受け継がれ、(秋田氏はのちに陸奥国三春へ移封)また、昭元の嫡男・細川元勝は藩主の義兄弟であり、京兆家当主であり、さらに織田信長の甥でもあるという血統から、秋田氏に迎え入れられ、その子孫は大老、城代など藩の重責を代々担いました。


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名門・細川京兆家に生まれながらも、父が政争に敗れ、幼少期に逃亡と人質の生活を強いられた細川昭元は、知略・謀略に特別長けていたという記録は見当たらず、戦においても、負け戦が多く記録されています。

しかし、目まぐるしく変わる畿内の権力者に対して常に反抗しながらも、最終的には生き残った細川昭元という人物を振り返ると、「旧勢力の貴人」として利用されながらも、名門の意地を通しつつ、時代の流れに合わせ、自身とその家名を後世に残したことは、昭元の類い稀な処世術によるものではないかと思えてなりません。

信長も初めは早期に自身の畿内統治を安定させるために、昭元の血筋を利用したことは事実でしょうが、譜代家臣にさえ苛烈な処遇を断行する信長が、義兄弟となり、京近辺の要所の統治を任せるなど、昭元という人物そのものに対してそれなりの評価を与えていたのではないかと考えて止みません。

(寄稿)kazuharu

下間頼龍~本願寺の僧侶であり武将としても活躍した重鎮

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