石田三成の忍城水攻め采配と智略

忍城

■豊臣勢の忍城攻め

1590年6月、豊臣秀吉は関東の北条攻めを行った際に、北条氏小田原城だけでなく、北条配下の諸城も攻略した。
その際、北条氏は各地の主力を小田原城に入れて篭城するように参集させたが、各城は、その在地城主の配下の者などが、少人数にて守備に当たった。
この埼玉県の「忍城」でも例外なく、城主・成田氏長は小田原城に入り、忍城は城代として甥の成田泰季を置き、兵300と領民2700の約3000が、忍城に篭城した。

戦国時代では北条氏に限らず、多くは合戦時に農民も臨時兵として動員していたのだが、篭城する際には、領民も城に入れるのが通例なので、忍城に限らず、豊臣の北条攻めの際、八王子城津久井城など北条氏の各城では、同様に領民も城に入れて篭城した。もちろん、小田原城にも何万と言う農民を入れて篭城していたのである。


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豊臣秀吉は、忍城攻略に館林城を和議開城させた石田三成を中心にした兵力を派遣した。
1590年6月、約3000が篭城する忍城に石田三成の軍勢20000が到着。総大将は石田三成で、大谷吉継長束正家と軍師とも言える有力武将が続き、佐竹義宣、多賀谷重経、大関晴増らも加わっていた。
また、真田昌幸真田信之真田幸村も援軍として赴いたとされる。
当時の石田三成の地位などを考えると、総大将になったのは大抜擢であったとも言える。
なお、玉縄城徳川家康に降伏した北条氏勝も豊臣勢の案内役として付き従っていた。

忍城(おしじょう)は湿地帯を利用した沼の中に浮かぶ水の城だ。
洪水の多い一帯にできた湖と、その中の島々を要塞化した城郭であり、本丸を始め二の丸、三の丸、諏訪曲輪の主要部分が独立した島である。これらを橋で連結している。
北条氏康の忍城攻め、上杉謙信の忍城攻めにも耐えた堅城ぶりである。
一般的にはそんな事を知ってか、石田三成は降伏に応じない忍城を、主君・豊臣秀吉が得意とする「水攻め」することにしたとされている。
石田三成は、今でもさきたま古墳群として知られる「丸墓山古墳」の頂上に本陣を置いたとされ、総延長28kmにも及ぶ広大な堤防を築き、忍城を水の底に沈めようとした。
金に糸目をつけずに人夫を集めた数は10万人とも言われ、わずか1週間(5日とも)で28kmもの堤防が完成したと言う。

しかし、その堤防も決壊したとされ、うまく水攻めをする事はできなかったとされる。
具体的には、成田氏の間者が、堤防を決壊された、又は、突貫工事した人夫たちが手を抜いていたとも言われ、いずれにせよ大雨が降りだして堤が決壊した模様だ。
成田勢に損害を与えるどころか、堤防の決壊で逆に石田勢に犠牲が多数出たとも言われている。
そして、忍城付近は、以前より増して、泥沼地とかし、力攻めどころではなくなったしまったのだ。

丸墓山古墳から忍城方面の展望

6月10日から水攻め工事を開始し、その直後の6月12日付けの石田三成の書状からは「だいたい忍城 水攻めの準備はできましたが、諸将は水攻めと決めてかかっているので、全く攻め寄せる気がありません。」と嘆いているのが伺えるのと、豊臣秀吉は、何回も石田三成に対して、水攻めの方法や、堤防が出来たら使者に絵図を持たせるようになど、細かく指示をしている。
それらを考慮すると、石田三成の発案と言うよりは、水攻めは豊臣秀吉の指示とも考えられる。
私が推測するに、小田原城攻めでは一夜城とも呼ばれる「石垣山城」を築いた豊臣秀吉である。当時、関東では初めて「石垣」を用いた城で、財力・権力の誇示に他ならない。
そんな豊臣秀吉だから、上杉謙信や北条氏康でも落とせなかった忍城付近を、あたり一面「湖」に変えて攻略してやろうと、単に城を落とすと言う目的だけではなく、莫大な費用も掛かる水攻めを関東諸侯に見せて、服従させようとしたのではないだろうか?
上越新幹線の線路脇に石田堤史跡公園があり、一部ではあるが当時の堤防を知る事が出来る。
28kmは、備中高松城水攻めの4倍以上の長さであり、忍城の水攻めは戦国合戦史上においても最大規模となる。
当時の書状からは、水攻め開始から1ヶ月後、小田原城開城の時点でも、築堤工事をしていたことが伺えるのだ。

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