北条幻庵の解説 実は文武両道の名将である北条家の長老

北条幻庵(ほうじょう-げんあん)は、伊勢長氏(北条早雲)が伊豆を手に入れた頃、3男として1493年に生まれた。幼名は菊寿丸。
母は側室・栖徳寺殿(葛山備中守維貞の娘)で、どうやら、実家の葛山館にて産んだようだ。
北条早雲(伊勢宗瑞)の男子の中では末子であり、側室の子でもあったことからか戦国時代の習いで、幼い頃、箱根権現社の別当寺・金剛王院に入寺して僧となる。
箱根権現は鶴岡八幡宮に次いで関東武士の信仰を集めてあり、箱根山を重視した北条早雲は北条幻庵を送り込んで掌握をしようと考えたようだ。

その後、1519年4月28日には、僧籍のまま父より4400貫の所領を与えられたと、箱根神社の文書に記録があるが、その年の8月に北条早雲は死去した。
1523年には兄・北条氏綱が箱根権現を再造営したが、この時の棟札に39世別当の海実と並んで菊寿丸の名がある。


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その後、近江の三井寺にて修業すると1524年に出家したようだが、すぐに箱根権現の40世別当になったと考えられる。
別当としては北条長綱として名が見られ、1538年頃まで在職したが、1536年頃からは宗哲と名乗ったとされる。

なお、このように伊勢長綱から北条長綱と改名し、隠居したあと幻庵宗哲と号した為、一般的に「北条幻庵」と言う名で知られるため、このページでは以後、北条幻庵の名称で統一してご紹介したい。

もともとは政治面の僧侶として活動していたが、作法伝奏を家業とした伊勢家として文化知識も多彩で、和歌・連歌・茶道・庭園・一節切り・鞍鐙作りの名人としても知られ特に「鞍打幻庵」とも呼ばれた。

それだけでなく、馬術や弓術にも優れており、弓に至っては無双の達人であったようだ。
1535年8月、武田信虎との甲斐・山中の戦いや、1535年10月の上杉朝興との武蔵・入間川の戦いなどでも活躍し、北条一門の長老として、北条氏綱を補佐している。

1541年、兄・北条氏綱が死没し、北条氏康を後見するため、小田原の久野に居を構えた。(北条幻庵屋敷)

1542年5月、甥の玉縄城主・北条為昌が死去したため、北条幻庵は武将として三浦衆・小机衆を配下にしている。

1543年からは「静意」の印文がある印判状の使用を開始したため、北条幻庵の屋敷がある久野の地名を取って「久野御印判」とも呼ばれる。

1545年7月下旬、今川義元関東管領上杉憲政と内通し、北条氏綱に奪われていた東駿河へ侵攻した際には、長久保城を北条幻庵が守っていた。


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1559年2月作成の「北条家所領役帳」によると、家中では最大の5457貫86文の所領を領有していることが伺える。

1560年、長男・北条三郎が夭折すると、次男・北条綱重に家督を譲った。
また北条氏康の弟・北条氏尭を小机城主としたが、程なく北条氏尭も没し、1569年12月には武田勝頼を総大将に武田信豊山県昌景真田幸隆真田信綱らとの蒲原城の戦いて、次男・北条綱重と3男・北条長順らが討死したため、同年、北条氏康の7男・北条三郎(上杉景虎)を娘と結婚させて養子に迎えて、家督と小机城主を譲り、隠居した。

1569年、越相同盟となると、北条三郎(上杉景虎)が、上杉謙信の養子となり越後に入ったため、北条三郎(上杉景虎)と離縁していた娘と北条氏光を結婚させて小机城主とし、家督は次男・北条氏信(北条綱重)の子で孫になる北条氏隆に継がせた。

また、北条幻庵は北条5代の菩提寺・早雲寺の庭園をつくった人物としても知られる他、北条氏康の娘が吉良家に嫁ぐ際「幻庵おほへ書」という心得書を与えたともされる。

晩年は、久野の北条幻庵屋敷にて隠居生活を送ったようだが、北条五代記によると初代・北条早雲から北条氏直までと5代に渡って仕え、豊臣秀吉が小田原攻めを開始する直前の、1589年11月1日に没したとされ、そうなると、なんと97歳の長寿であったことになる。

ただし、一説には生年が遅い1501年生まれともされ、没年も1584年設、1585年設とあるり、生没年は今後の研究が待たれる。


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久野北条家を継いでいた北条氏隆は、北条氏滅亡の際に、最後の当主・北条氏直と共に高野山に入り、翌年に出家して釣庵宗仙と号した。
その後、讃岐の生駒家に仕えたが、1609年に死去し、子がなかったため、久野北条家は断絶している。

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