名門「朝倉氏の滅亡」一乗谷の戦いが呆気なかった件

朝倉氏の滅亡

比叡山焼き討ちによって大きな後ろ盾を失った朝倉氏と浅井氏。
1573年8月
信長は、裏切り者である浅井長政の討伐へ本格的に乗り出します。

信長出陣

自ら3万の軍を率いた信長は、北近江の浅井長政の居城・小谷城へ進軍。

信長
「朝廷や大名に大きな影響を及ぼした比叡山も焼き討ちによって完全に
無力化した。」

「これで朝倉や浅井も比叡山という大きな後ろ盾を失った。」

「あいつらは、今では手足をもがれたも同然だ。」


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「皆の者、良く聞け! これより浅井の小谷城を攻める。」

「小谷城を攻めれば、越前の朝倉が必ず援軍に来るはずだ。」

「これを機に朝倉と浅井を一気に叩き潰してやる。」

「わかったな!」

重臣たち
「はっ! 承知しました。」

「急げー! 屋敷に戻ったら、直ぐに戦の準備じゃー!」

浅井氏の危機

一方、織田信長が大軍で攻めてくると聞いた浅井長政と父・久政。

浅井長政
「父上、さきほど間者(スパイ)から至急の報告がありました。」

「信長が3万の大軍を率いて、こちらに向かっているとのことです。」

父・浅井久政
「比叡山を焼き討ち後、次の標的は儂らだというのは覚悟していた。」

「甲斐の武田信玄が亡くなった事で、それが余計に早まってしまったのは
計算外だった。」

「信長が大軍を率いてくるという事は、金ヶ崎の戦いでの裏切りもあるから、
儂らを本気で皆殺しにする気かもしれないな。」

浅井長政
「我々は、総勢5千なので籠城したとしても、とても立ち向かえません。」

父・浅井久政
「長政、朝倉殿に至急援軍を依頼するのだ。」

「儂らには地の利もある。」

「朝倉軍の2万と連合して戦えば、決して織田軍に負けることはない。」

浅井長政
「確かに朝倉の援軍が来なければ、非常に厳しい戦いといえます。」

「ただ、今までの戦を振り返ると、朝倉は決して戦上手とは言えません。」

「そんな朝倉を今回も当てにしても良いのでしょうか?」

「後ろ盾だった比叡山もいないのですよ。」

父・浅井久政
「それは、儂も十分承知している。」

「でも、居ないよりはいたほうがマシだろう。」


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「今更だが、(朝倉)宗滴殿が生きていてくれたらと何度思ったことか・・・。」

浅井長政
「亡くなった人を思っても仕方ありません。」

「父上、これより朝倉殿に援軍の使者を送ります。」

父・浅井久政
「長政、よろしく頼む。」

怖じ気づく朝倉義景

浅井からの援軍の要請を聞いた越前・一乗谷城の朝倉義景。
案の定、乗り気ではありませんでした。

朝倉義景
「浅井から援軍の要請が来たが、信長は強いから戦いたくないな。」

「比叡山を焼き討ちしてからは、天魔とか呼ばれてるし・・・。」

「そんな奴と戦うだけ損でしょ。」

「以前は、儂よりも身分が低いからってバカにしていたけど・・・。」

「今は、そういう奴とは関わりたくないな。」

「どーれ、蹴鞠(けまり)でもやってこようかなー。」

家臣・山崎吉家
「殿、何を言ってるんですか!」

「信長の事だから浅井を滅ぼした後、そのままの勢いで間違いなく
此処を攻めてきますよ。」

「どちらにしても戦わなければ、朝倉氏は滅亡してしまいます。」

朝倉義景
「わかった、わかった。」

「じゃー、誰か行ける者はいないかな?」

家臣・山崎吉家
「ここは、殿が出陣した方が良いと思います。」

「この戦は、朝倉の命運が掛かっていると思ってよいでしょう。」

朝倉義景
「えーっ! 儂が行くの?」

「誰かいるでしょ。」

家臣・山崎吉家
「既に主だった者には、声を掛けましたが全て断られました!」

朝倉義景
「うーん、仕方ない。」

「やっぱり儂が行くしかないのかぁ・・・。」

「じゃー、皆に戦の準備をするように伝えてくれ。」

「あー、蹴鞠(けまり)がしたい・・・。」

家臣・山崎吉家
「殿。 今、何か言いました?」

朝倉義景
「いや・・・、別に。」


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「儂も出陣の準備をしないとな・・・。」

家臣・山崎吉家
「では、皆に知らせて参ります。」

戦う前に撤退って?!

越前を出陣した朝倉軍。
総勢2万の軍勢でしたが精鋭と呼べるものではありませんでした。
浅井領に入った朝倉軍は、小谷城近くの田上山に陣をとりました。

小谷城の向かい側にある山田山に布陣した織田軍。
着陣が整うと直ぐに周囲の砦を次々と攻め落とし始めます。

勢いに乗る織田軍は、小谷城近くにある朝倉方の大嶽(おおづく)砦も
朝倉義景の前で簡単に落としてしまったのです。

これを自陣から見ていた朝倉義景。
信長の大軍が此処に押し寄せてきたら一溜まりもないと、冷や汗で
背中を濡らします。

朝倉義景
「これは・・・まずいよなぁ。 あー、やっぱりまずいよ。 マジでまずいって!」

「おーい、山崎ー! ヤバいぞ、これは!」

「このまま戦っても犠牲が増えてしまうだけだよな。」

「山崎もそう思うだろ。 そうだよな。 な、なっ!」

「もう、決めた。 決めたぞ!」

「山崎! ここから直ぐに撤退じゃー!!」

家臣・山崎吉家
「殿! 浅井親子を裏切って撤退するのですか?」

「まだ、私たちは何もしていないんですよ?」

朝倉義景
「お前、あれを見なかったのか?」

「織田の勢いは半端ないって!」

「あんな連中と戦って勝つとでも思うか?」

「ここは、一旦引き返して作戦を考えよう。」

「なぁ、山崎。 そうしよう!」

家臣・山崎吉家
「殿、せめて浅井殿に伝えてからでもよくないですか?」

朝倉義景
「そんなことをしているうちに織田が攻めてきたらどうする?」

「きっと浅井だって・・・。 多分・・・わかってくれるよ。」

「なぁ、だから早く撤退しないと。」


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「このまま織田が攻めてきて、儂が死んでも良いのか?」

家臣・山崎吉家
「わかりました。 撤退しましょう。」

「ただ、我々の撤退を知れば、織田の精鋭たちが必ず追ってくるはずです。」

「織田が追いついたときの殿(しんがり)を私たちが務めます。」

朝倉義景
「そうか。 山崎たちが殿(しんがり)なら心強い。」

「では、皆に撤退命令を出すのだ。」

家臣・山崎吉家
「承知しました。」

「(朝倉)宗滴殿、間もなくそちらに参ります。」

朝倉義景
「山崎、何か言ったか?」

家臣・山崎吉家
「いえ、別に。」

田上山に陣を取っていた朝倉軍は、戦況を見て不利な事を察知すると
突然撤退を始めたのでした。

織田の猛追撃

この朝倉軍の撤退は、信長の陣にも報告されました。
信長
「義景の奴め。 予想通りに儂らを恐れて撤退したな。」

「これより、小谷城を包囲する軍を残して、それ以外は朝倉を追いかける。」

「今こそ、朝倉を一気に潰すチャンスだ!」

「とりあえず近くに陣を張っている佐久間隊は追尾しているか?」

側近
「いえ、それが全く動いていないようです。」

信長
「あのバカが! 絶好のチャンスを逃しやがって。」

「もうよい! 儂と母衣衆で直ぐに朝倉を追いかける。」


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「(佐久間)信盛に隊を分けて追いかけてくるように伝えておけ!」

刀根坂の戦い

刀根坂付近で朝倉軍に追いついた織田信長。

信長
「目の前の朝倉軍を一人残らず切り捨てるのだ。」

「皆の者、突撃ー!」

母衣衆
「おーっ!」

予想よりも早く追いついた織田軍の追撃に朝倉軍は大混乱となり、
総崩れとなってしまいます。

朝倉義景
「本当に織田軍が追いついたのか?」

「あー! どうしよう。 どうすればいいんだ。」

「山崎、儂は死にたくない。」

「頼む。 助けてくれ!」

家臣・山崎吉家
「殿、此処は私たちが抑えますので早くお逃げください。」

朝倉義景
「山崎、お前だけが頼りだ。 よろしく頼む。」

「では、一乗谷で待っているぞ。」

逃走中

朝倉義景は、味方の多くが倒れていくのを横目に見ながら、
近習と共に一乗谷に向けて逃走します。

この逃走中にも逃亡していくものが相次ぎ、一乗谷に着いた
ときには、朝倉義景の周りには10人程度しか残っていませんでした。

殿(しんがり)を務めた木村吉家らは、朝倉軍では珍しく奮闘しましたが、
織田軍を抑えきることが出来ず、討死してしまいました。

朝倉義景の最期

一乗谷を包囲した織田軍は、間髪入れず一帯(城下町)に火を放ちました。
その火は、やがて城にも燃え移り始めます。

この放火によって、かつて栄華を誇った越前・一乗谷の城下町は三日三晩も
燃え続けたのでした。

ここにいては危険と判断した朝倉義景は、朝倉一族で筆頭家老の朝倉景鏡
頼って落ち延びたのです。

ところが、朝倉景鏡は逃げてきた浅倉義景らを突然取り押さえてしまったのです。
信長に到底敵わないと考えた朝倉景鏡は、義景の首を差し出すことで自分たちが
助かる道を選択したのでした。


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最初は、事情の掴めなかった朝倉義景でしたが、自害を迫られたことで内容を
理解します。

無念のまま自害した朝倉義景。
11代も続いた名門・朝倉氏は、親族に裏切られ織田信長によって滅亡したのでした。

浅倉義景  享年:41

(寄稿)まさざね君

富田景政 富田重政 剣術に優れた朝倉武将
朝倉景健 (安居景健)~姉川の戦いでの朝倉勢大将
前波吉継(桂田長俊)~朝倉家の重臣でしたが主家を裏切ったその顛末は?
朝倉義景とは~一乗谷朝倉家百年の栄華
朝倉景鏡~朝倉家を最後に裏切った筆頭一族
疋壇城(疋田城) 刀根坂の戦いの7日後に朝倉氏滅亡
一乗谷城(一乗谷朝倉館)と一乗谷城の戦い~朝倉氏の栄華

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